人の汗腺は500万個ほどありますが、実際に働いている汗腺は230万個で、他の汗腺は休眠しています。汗かきの人は、一部分が過剰に汗が出る人が多いですが、全身から過剰に汗が出る人もいます。単なる汗かきと多汗症と呼ばれる汗かきの人といます。この記事では、汗かきを漢方で治す方法をお伝えします。

汗かきの悩み

汗かきの人は、人知れず色々な悩みを抱えています。汗は必要ですが、出すぎると頭痛の種となりますね

  • 電車に乗ると汗がしたたり落ちて、周りの人から汗のかきすぎと言われて傷つく
  • 汗をかくとべたべたして気持ちが悪い
  • 握手ができない
  • 足の裏に汗疱ができる
  • 鉄棒が汗でうまくつかめない
  • パソコンやスマホが汗で壊れる
  • サンダルが汗で滑って転ぶ
  • 服を選ぶとき、触って選べない
  • 仕事で人前に出ると、緊張して汗がダラダラとでる

汗を過剰にかくと、一目が気になり、外出しにくくなりますが、他にも同じようになやみを抱えている人は多いのです。漢方薬は体質を改善するので、だらだら出る汗が少しずつ改善されてきます。

汗かきを漢方薬で治す方法

汗かきの体質を改善し時間をかけて治すので、西洋医学のような即効性はありませんが、根本の体質から改善するので将来的に汗かき体質が改善されます。汗かきの体質ごとに漢方で治す方法を知り、その汗や体質に効能がある漢方薬を紹介します。

漢方の考え方

血気盛んという言葉を聞いたことがあると思いますが、東洋医学では血気というのは、「気」と「血」のことです。この「気」と「血」と他に体液の「水」が体を循環してめぐり、生命活動をいとなんで健康でいられることが漢方の考え方です。

汗かきや多汗症は本来は尿で体外に排出される水が、体内に溜まっているためになると考えられています。緊張やストレスなどの「気」の乱れでもなると考えられます。漢方薬を使って、気の乱れを整えて体内の溜まった水を排出して汗かきを改善します。

漢方薬の飲み方

漢方薬には剤型が4種類あります。

煎じ薬

生薬を煎じた液

散剤

乾燥させた生薬を砕いて粉末にしたもの

丸薬

生薬を砕いて粉末にしてはちみつやその他の物を混ぜて丸い薬にしたもの

エキス剤

生薬からエキスを抽出し、粉末または顆粒にしたもの

煎じ薬は毎日煎じる手間がありますが、生薬は自由に処方できます。一方、散剤や丸薬、エキス剤は携帯に便利です。苦いものが多いので、オブラートに包んで飲むといいでしょう。基本的には水かぬるま湯で飲みます。

飲む時間

飲む時間は食前か食間です。食前は食事の前30分頃のことで、食間とは食後3時間程度の時間をさします。

汗かきに処方される漢方薬

汗かきにいいとされている体質と汗の出方を考えた漢方を紹介します。

防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)

体質

暑がりで疲れやすく、水太りのぽっちゃりタイプの体質の人、むくみがある人、肥満で汗かきの人

効能

防已や黄耆には体の水分の巡りを良くして尿に排出することで、汗かきや多汗症、浮腫や関節炎、神経痛などにも処方されます。また、黄耆には免疫を調整する作用があるため、体力のない人に用いられます。

成分

防已(ぼうい)、黄耆(おうぎ)、白朮(びゃくじゅつ)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)

柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)

体質

貧血気味、体力のない人、更年期障害がある人、のどの渇きがありのぼせやすい人、神経過敏な人

効能

柴胡が入っているので、体の炎症をとります。のぼせからくる寝汗や頭汗、緊張から来る手汗を改善し、発汗を抑制します。また、風邪や喘息にも効果があるとされています。

成分

柴胡(さいこ)、桂皮(けいひ)、乾姜(かんきょう)、黄ごん(おうごん)、牡蛎(ボレイ)、か楼根(カロコン)、甘草(カンゾウ)

柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)

体質

寝つきが悪い人、神経過敏で小さいことを気にする人、普通の体力の人

効能

体にこもった熱を冷まし、気の巡りを良くして精神を静める働きがあります。牡蛎は天然カルシウムなので、ストレスや不安、緊張などの精神的な汗かきの人に効果があります。

成分

柴胡(さいこ)、半夏(はんげ)、茯苓(ぶくりょう)、桂皮(けいひ)、黄芩(おうごん)、大棗(たいそう)、人参(にんじん)、竜骨(りゅうこつ)、牡蛎(ぼれい)、大黄(だいおう)、生姜(しょうきょう)

桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)

体質

寝汗や上半身からベタベタした汗をかく人、汗もや湿疹のできやすい人、弾力性がない皮膚が弱い人、体力、気力が衰えているが冷え性ではない人

効能

黄耆が含まれているので、滞った水分をめぐらす働きがあり、汗かきや多汗症の人の汗を抑制します。退職がない人の体力増進にも用いられます。まあ、精神不安や頭痛、むくみ、のぼせ、寝汗、上半身の汗、皮膚が弱く化膿しやすい、下半身が冷たいなどの症状の改善に効果があります。

成分

桂皮(ケイヒ)、生姜(ショウガ)、甘草(カンゾウ)、芍薬(シャクヤク)、黄耆(オウギ)、大棗(タイソウ)

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

体質

のぼせ症の人、頭汗をかく人、肌に炎症があり、赤くなりやすい方、口内炎がある人

効能

体を冷やして頭の上部の熱を取り除きます。イライラしたり、のぼせて汗が出る熱を取り除き、発汗を抑制します。熱を取ることで炎症を沈めて口内炎や皮膚炎を改善します。

成分

黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、黄柏(おうばく)、山梔子(さんしし)

防風通風散

体質

お腹周りの脂肪が多い人、高血圧や肥満でむくみがある、便秘がちで代謝が悪い、体力があり暑がりで汗かきの人

効能

脂肪を燃焼し、体内の水の巡りを良くして、余分な水を尿や便として排出します。肥満症を改善して、脂肪の燃焼をしやすくします。体を温め、代謝を良くしてむくみを取ります。

成分

防風(ボウフウ)、黄ごん(オウゴン)、大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)、麻黄(マオウ)、石膏(セッコウ)、白朮(ビャクジュツ)、荊芥(ケイガイ)、連翹(レンギョウ)、桔梗(キキョウ)、山梔子(サンシシ)、芍薬(シャクヤク)、当帰(トウキ) 川きゅう(センキュウ)、薄荷(ハッカ)、滑石(カッセキ)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)

自分にあった漢方薬を処方することが大切

還付薬は生薬ですが、副作用もあります。自分の体質に合った漢方薬でないと効き目がなかったり、副作用が出ることがあるので、漢方医や漢方薬局で正しく処方してもらうことをおすすめします。

漢方医を受診して漢方を処方

漢方を取り扱っている病院はネットで探すことができます。最近では漢方を取扱う病院が増えているので、体質を改善し、将来的に漢方によって治したいと思っている人は漢方医にかかるといいでしょう。漢方医の病院は、日本臨床漢方医会から調べることができます。

少ないですが、皮膚科で漢方を扱っている病院もあります。一般に東洋医学と西洋医学の両方を扱っている医療機関が多いです。

漢方薬局で相談して購入する

漢方薬局は、漢方を専門に扱い、漢方の知識もあるので、相談して処方をしてもらうといいでしょう。薬剤師が、その人の体質と症状から判断して適切な漢方を処方します。費用は数千円~1万円ほどです。漢方薬は体質改善を目的としているので、即効性はありません。

1か月は処方してもらった薬を飲みましょう。漢方薬も副作用があるので、他に服用している薬があれば必ずお薬手帳か薬袋を見せて、どの薬を飲んでいるかを確認してもらいましょう。

市販の漢方薬を購入する

一般のドラッグストアでも漢方薬が売られています。一般の薬局でも薬剤師が薬を管理しているので、相談して購入しましょう。上記の漢方薬で自分に当てはまりそうな漢方薬を購入することもいいですが、自分の体質がどんな体質かも伝えて、薬剤師に選んでもらう方が確かです。

最後に

汗かきの人は、だらだら出る汗で人前に出ることが苦痛になったり、スマホやパソコンが故障したりすることがあります。漢方薬は汗かきの原因を把握して、体質を改善することで気血や水の巡りを良くして、尿や便から排出することで汗かきを軽減します。すぐに効果は出ませんが、長い目で見ると漢方薬で体質改善することで、汗かきが改善になることがあります。それでも改善できない場合は、皮膚科を受診して塗り薬や飲み薬を処方してもらいましょう。