顔汗がひどいから、人前に出ることが恥ずかしい。
顔汗がぼとぼとと滴るように出るから物を書いていてもインクがにじんでしまう。
顔汗がべとべとしているからパソコンを触るとそれがついて汚れる、化粧がすぐに崩れて困る、などの悩みを抱えている人が多いですね。

それほど顔汗がひどい症状なら、病院に行って相談し、適切な治療をうけましょう。

顔汗がひどいのは多汗症のため?

顔汗がひどい状態には、クーラーを使った部屋で長い時間パソコンと向かい合っているような生活をしていると、運動不足になり、エクリン腺が休眠状態になり、話などをして動きがある顔の汗が働いて、顔からだけ汗がダラダラでるような状態です。
それは、多汗症なのかもしれません。

多汗症とは?

汗にはエクリン腺とアポクリン腺があり、エクリン腺は水分がほとんどで臭いがありません。
ただ、皮膚にいる常在菌と一緒になり汗が分解されると嫌なにおいが発生するのです。
一般に暑くなったりスポーツをしたりすると、汗を出すことで体温調節をします。

しかし、多汗症になると汗がだらだらと異常なほど出てきます。
服に汗じみができたり、顔汗がひどいためメイクが落ちたりします。多汗症には全身性多汗症と原発性局所多汗症があります。

多汗症なのか見分け方をチェック

多汗症の診断する場合に、原因がわからない汗が異常にだらだらでる状態が6か月以上続いている場合や下の項目が2項目以上当てはまるときに多汗症を疑った方がいいかもしれません。(日本皮膚科学会2015年の 原発性局所多汗症診療ガイドライン改訂版を参照)

●25 歳以下のときにはじめて発汗が異常なほど出たことがある

●手の平や足の裏、両わきなど左右対象に発汗がみられる

●寝ている間は汗が出ていない

●1 週間に 1 回以上、異常なほどの汗をかいてしまう

●家族や親戚に多汗症の人がいる

●汗によって日常生活にかなり支障をきたす

顔汗がひどいのは局所性多汗症の1つ

局所制多汗症は、顔やわき、頭、背中、手足などの局所的な部分だけが異常に汗が出る病気の1つです。
局所性多汗症の人は、1か所だけでなく、わきや手の平、足の裏など、汗腺が多いところから汗が出やすいですが、それらの部分が1か所だけでなく、数カ所から同時に出る場合もあります。

ほとんどの人が局所性多汗症ですが、顔汗は皆の目に入る場所なので気になる部分です。
また、緊張やストレスなど交感神経が過敏になった時も汗が出ます。
この時は一過性のものなので、制汗剤などで対処できますが、いつも出るようなことがあれば日常生活に支障が出てきます。
日常生活に支障が起きるほどの局所性多汗症のことを原発性多汗症といいます。

全身性多汗症とは

全身性多汗症は背中やお尻、胸や手足、太もも、顔など全身から汗が噴き出して汗だくになる状態です。
全身性多汗症は10%ほどの人でほとんどが局所性多汗症です。
原因についてははっきりとわかっていませんが、遺伝でおきることや病気によっておきることがあります。

全身性多汗症を引き起こす病気で注意しなくてはいけない病気が甲状腺機能亢進症や糖尿病、更年期障害、自律神経失調症、褐色細胞腫、悪性リンパ腫などの内分泌系の代謝疾患です。
他に、薬物による副作用や循環器疾患、感染症、呼吸不全などの疾患でも多汗がおこることがあります。

顔汗で悩んでいるなら病院へ行こう

顔汗がひどいと仕事や家事に集中できず、顔汗が気になります。
重度の多汗症の人は、顔汗がどうにか耐えられるがしばしば邪魔になる状態か顔汗が耐え難い状態の人で、それほどの多汗症だと病院での受診をおすすめします。

顔汗がひどいときは病院で何科を受診するの

多汗症は、以前は病気ととらえていませんでしたが、近年は多汗症の悩みを持つ人が多いため、多汗症外来などの専門外来ができているので、専門外来があればそこで受診できます。
一般には、皮膚科での受診し、治療をうけますが美容外科や美容皮膚科でも多汗症治療を行っています。

専門外来や皮膚科では多汗症かどうかの検査を行っています。
検査には「ヨード紙法」「重量計測法」「喚気カプセル法」があり、多汗症の重症度がわかります。

病院で行っている検査とは?

ヨード紙法

ヨード薬を染み込ませている紙に汗をかく部位に触れさせて、汗がどのくらい出ているか調べる検査方法です。
顔汗の場合、汗がでているときに顔に紙を軽くおさえて、汗をうつします。
汗の出が重症の人ほど紙が大部分で変色します。中度の人は、汗が黒く広がってヨード紙が変色します。
見てわかる判断しやすい検査です。

重量計測法

この検査は手掌多汗症の人に用いられます。
ろ紙がついているビニール手袋を5分ほどはめてから、その後ろ紙の重さを測定して汗の量を調べる検査法です。
顔汗には用いられません。

換気カプセル法

多汗の部分に小型のカプセルでおおい、乾燥ガスを流して汗を蒸発させます。
するとカプセルの先からガスとともに蒸発した汗も一緒に出てくるので、ガスの湿度を調べることで発汗量を調べる検査です。

顔汗がひどいときの病院での治療とは?

顔汗がひどい場合は、塩化アルミニウムの外用または抗コリン剤の内服治療を行い、それが難しい時はボツリヌス菌毒素を注射します。
手の平や足の裏の多汗の場合は、電気治療のイオントフォーレーシスを行いますが、顔汗の多汗の場合はこの治療ができないため、外用療法または内服療法をまず行います。

塩化アルミニウム療法

塩化アルミニウムの溶液を自分で寝る前に多汗な部位に塗ります。
そして、朝起きたら汗を洗い流します。塩化アルミニウムが肌に触れると、一時的に汗腺が遮断され汗が流れにくくなります。
外用薬なので自宅で治療ができるため、通院回数が少なく、忙しい人にはおすすめです。

ただ、塩化アルミニウムは長期間つけると、肌がかぶれることがあるので医師の指示のもとでの使用がすすめられます。
この薬は専門外来や皮膚科、美容外科で処方されています。

内服療法

汗が出る仕組みは、汗腺に指令する伝達物質のアセチルコリンによって汗がでます。
そのため、抗コリン剤ではアセチルコリンが放出される働きを抑えます。
すると、汗が出にくくなるのです。
内服薬で代表的なものはプロバンサインで、内服薬としての効果が高いですが、内服薬は、全身の汗が出にくくなるので顔汗だけを止めることは難しいです。

この薬の副作用として、喉が渇くとか尿量も減少するといったことがあるので医師の指示をしっかり守って服用しましょう。

この薬は、多汗症専門外来、皮膚科以外に精神科や心療内科でも処方されています。
病院で処方された薬は保険が適用されます。

ボツリヌス毒素の局所注射療法

上記の2つの治療で効果がない場合は、ボツリヌス毒素局所注射療法を行います。
この療法は、アセチルコリンの放出を抑えて汗を出にくくする治療です。
ボツリヌス毒素製剤を汗がひどい部分に注射すると、1回の注射で3カ月~半年ほど効果が持続します。

美容外科や形成外科での治療ではボトックス注射療法と呼ばれていますが同じ治療です。
この治療には、顔汗の場合は健康保険が適用にはなりません。
高額になる場合もあるので、その点も考慮しておくといいでしょう。

交感神経遮断術

この手術は、汗腺の神経を手術で完全に遮断するので、その部分から汗が出なくなります。
内視鏡を使って、全身麻酔で行われる手術です。
手術後は、手術部の顔汗が出なくくなっても他の部分から大量に汗が出るという代償多汗が多くの人に見られます。

汗は体温調節に必要なので、汗を完全に止めてしまう手術なので、重度の多汗症の人や本人が強く希望している場合にのみ行われます。
手術はペインクリニック科や呼吸器外科などで行われています。

緊張やストレス、不安がかかると顔汗がひどいときは、精神療法だけでは効果が期待できないが、外用療法や内服療法と併用することで効果をより高める可能性があると皮膚科学会の2015年診療ガイドラインには示されています。
精神療法は、心療内科や精神科で行われています。

最後に

顔汗がひどい症状は、メイク崩れや仕事中や家事の最中などにぽたぽた落ちて困りますね。
あまりひどい場合は多汗症の可能性があるので、病院を受診されることをおすすめします。
病院では汗の量をはかる検査や塩化アルミニウムの外用治療、抗コリン薬の内服治療、ボツリヌス毒素の局所注射療法、交感神経遮断術が行われます。
悩んでいる方は、まず皮膚科か専門外来を受診しましょう。